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プライム上場企業に就職するメリット&デメリット|本当にすごい?

東証プライム上場企業|メリット・デメリット

 「東証プライム上場企業(旧東証一部)はすごい?」-いいえ!メリットよりデメリットのほうが大きく、「別にすごくない」と言わざるを得ません。 「モテる」というのも幻想で、私はモテませんでした。就活生や社員にとって「上場企業だから」といいことは特になく、 むしろ非上場だったらよかったのにと思う瞬間がたくさんあります。

この記事の要点

  1. 社員にとって上場のメリットは特になし!
  2. 買収されるリスクというデメリット!
  3. 投資家向けの経営になり、30年先を犠牲にしがち
  4. 上場は「勝ち組」の基準にならない


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上場企業への就職は勝ち組?

 上場は勝ち負けに関係ない!

 上場企業への就職というだけでは、勝ち組でもエリートでもありません。 「すごい」ということも特にありません。

 「上場企業」というものは、あくまでブランドに過ぎません。 上場は資金調達を目的に行うものであり、例えば海外展開や工場新設などでお金が必要なときに、 株式を売って資金を調達します。それがやりやすい方法が上場なのであり、会社がすごいかどうかに関係はありません

 

就職難易度

区分就職難易度必要な学歴
BtoCの上場企業高い(倍率100~300倍)MARCH・関関同立以上
BtoBの上場企業低い(倍率10~40倍)Fラン可
BtoCの非上場企業高い(倍率100~300倍)MARCH・関関同立以上
BtoBの非上場企業低い(倍率10~40倍)Fラン可

 実は、就職難易度は「BtoCビジネス」か「BtoBビジネス」かによります。 上場企業かどうかは難易度に関係ありません

 就職の難しい会社は「すごい会社」かどうかすら関係なく、ただ知名度が高いかどうかです。 BtoCビジネスは消費者向けですから、宣伝広告を通じて学生にも名前が知れ渡っています。 ゆえに応募者数が増え、競争倍率が上がり、高学歴ばかり採用されるという結果になります。

 一方のBtoBビジネスは法人向けですから、広告宣伝をしません。 ゆえに学生の知名度が低く、上場企業であっても採用倍率は10~30倍、そしてFラン大学でも採用実績があるなど、 就職難易度が低いと言えます。

【関連記事】 BtoCはやめとけ!BtoBとどっちがいい?メリットやおすすめ

 ですが、「知名度」すら宣伝広告をしているかどうかに過ぎませんから、 すごい会社かどうか上場知名度就職難易度関係ないというのが結論です。

 強いて言うならば「採用倍率の高い狭き門を突破した」こと自体はすごいかもしれません。

【関連記事】 知名度で会社を選んではいけない|別にモテない!  

上場企業の何がすごい?

 上場で喜ぶのは、投資家だけ!

 上場企業の何がすごいかというと、投資家が喜ぶ会計書類を毎年公開していることと、 「儲かり続けるだろう」と認められたことがあるということの2点です。 就職して得になることは何もありません

 上場企業は毎年、投資家に向けた「特別な会計書類」を書かなくてはなりません。 法律で求められているものに比べて圧倒的に複雑で、それだけ詳しく書かれています。 しかし、これをもって「上場企業は会計がしっかりしている」とは言えません

 粉飾決算で摘発される上場企業は後を絶ちませんし、非上場でも粉飾決算をすれば税務署がやってきます。 税務署は不正を決して許しません。「非上場なら不正ができる」ということはありません。

 もう1点の「儲かり続けるだろうと認められたことがある」というのも、上場する瞬間の審査の話です。 赤字の上場企業も珍しくありませんし、昔「すごい」と言われたことがあるだけのことです。

 そもそも上場は資金調達と投資家のためのものであり、 そこで働くサラリーマンにとってメリットがないどころかデメリットが大きいです。 それを次の項目で解説していきます。

 

上場のメリットとデメリット

メリットデメリット
資金調達がしやすい
株価が上がる
経理が複雑になる
買収されるリスクがある
投資家向けの経営になる

 この一覧を見てわかる通り、上場企業に就職するメリットは特にありません。 強いて言うならば、「従業員持株会」に入って会社の業績を上向かせることができたら、 自力で株価を上げることができると言うことができます。

 一方のデメリットはサラリーマンにとって致命傷になりうるものです。 特に「買収されるリスク」や「投資家向けの経営になる」のは将来を危うくする可能性があります。

 

上場のメリット

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 就職に役立つメリットはない!

 上場のメリットは次の2点です。就職には役に立たないメリットしかありません。

  1. 資金調達がしやすくなる
  2. 株価が上がる

 最近ではサントリー(非上場)の子会社であるサントリー食品が上場したことが話題になりました。 経営破たんしたJALの再上場や、スカイマークの再上場も話題になりました。

 話題になるということは、誰かの損得に関係するということです。 上場のメリットを考えていきましょう。

 

メリット1:資金調達がしやすくなる

 上場するとまず、「資金調達がしやすくなる」というメリットがあります。

 上場とは、会社の株式を証券取引所(株式市場)で取引できるようにする許可を指します。 株式を公開すれば経営資金が集めやすくなるなどのメリットがある反面、会社経営の責任が高まるなどのリスクも伴います。

参照:上場とは?株式上場するメリット・デメリットや非上場との違いについて解説

 通常、株式会社の資金調達は「新株発行」か「銀行融資」で行います。 銀行の融資を受けると利息がかかりますし、返済期限もあります。 一方で新株発行なら利息はかからず、そもそも返済の必要がありません。

 工場を建てたいときや、支店を開設したいとき、新規事業を始めるときなど、 莫大な資金を調達するには新株発行が一番いい選択肢です。

 もちろん新株を発行しても、経営者が株主を募集して1人1人に株券を売るには手間がかかりすぎます。 上場していれば、証券会社やインターネット証券を通じて大勢の人が株を買ってくれますので、 簡単にお金を集めることができるのです。

 そういうわけで、上場するメリットの1つとして、資金調達がしやすくなると言えます。

 しかし非上場の企業でも資金調達がしたいときには上場すればいいのであって、 昔から上場しているほうがよいなどのメリットではありません。

 

メリット2:株価が上がる

 もう一つのメリットは、「上場すると株価が上がることが多い」ことです。

 例えばサントリー食品の場合、サントリー食品の株をほしがる人は大勢いました。 しかしこれまで非上場だったので、サントリー食品株を買えませんでした。 上場すると、株を買いたかった人が殺到します。

 2013年の上場当時3200円だったサントリー食品株は、2年で5000円を上回りました。 株価はおよそ1.5倍です。仮に非上場時代に1億円分の株を買っていたら、 上場から2年で1億5000万円になったということです。

 「株価が上がる」のは、創業者や投資家のメリットです。 創業者は特に、起業した時点ではかなりの割合の株式を持っています。 上場して株を売りまくれば大儲けできますね。

 投資家も同様で、創業者から事前に株を買っておけば、上場時に大儲けできます。特に就職して働くサラリーマンに関係のある話ではありませんね。 ただし、「従業員持株会」に入っていた場合は金融資産が増えてトクをする場合があります。

 

上場のデメリット

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 就職後に困るデメリットがある!

 上場のデメリットは、非上場のメリットでもありますが、 実は、サラリーマンにとっては次の3点があります。

  1. 経理が複雑になる
  2. 買収されるリスクがある
  3. 投資家向けの経営になる
 

デメリット1:経理が複雑になる

 年度末に経理が家に帰れない原因

 上場には、「経理が複雑になる」というデメリットがあります。 上場すれば「会計の透明性・公正性」が求められますので、3ヶ月ごとに決算短信を書かなければなりませんし、 年に1度は有価証券報告書を作成しなければなりません。経理の仕事はドッと増えます。

 経理部は決算短信と有価証券報告書で苦しんでいます。「決算期は家に帰れない」などと言うのも、有価証券報告書のせいです。 会社の持っている現金や負債だけでなく、材料や製品をお金に換算して評価しなければなりませんし、 間違えると粉飾決算になりかねませんから、精神的にもピリピリします。

 非上場の会社なら決算短信も有価証券報告書も公開が不要ですので、この点では多少楽になります。

 

デメリット2:買収されるリスクがある

 買収されたら終わり!

 三洋電機・住友金属・三井生命・阪神電鉄などは、いずれも買収されてしまった会社です。 あのフジテレビすらライブドアに買収されかけたことがあります。 これらはすべて、非上場ならば起きなかったことです。

 買収されると悲惨です。三洋電機しかり、住友金属しかり、買収された企業にいた社員は、 買収した企業の社員より地位が低くなります。給料が上がる場合もありますが、 それ以上に元ライバル企業だった買収元に雇われるわけです。

 住友金属は合併後「新日鐵住金」になりましたが、ついに社名変更で「日本製鉄」となり、 三井生命は財閥の「二木会」を退会の上、「大樹生命」となりそれぞれ社名を失いました

参考:三井生命に社名変更を迫った「財閥の掟」

 阪神電鉄は村上ファンドに株式を買い集められていることに気づくのが遅れ、 最終的には阪急電鉄に身売りすることで買収防衛をしましたが、 会社がなくなってしまったことには変わりありません。

参考:阪急・阪神経営統合|Wikipedia

 自社ビルを売却されたり、事業を縮小させられたり、ノウハウだけ吸収されて用済みとなった社員はリストラにあったりと、 買収されるデメリットは大きすぎます。

 

デメリット3:投資家向けの経営になる

 未来を見通さず今年の黒字だけを見た経営!

 投資家向けの経営になるのも、上場企業のデメリットです。 具体的には、「給料に回せるお金」を「配当金にしてしまう」ことや、 「20年、30年先の未来」ではなく「今年の黒字」のためにコストカットに走りがちということが挙げられます。

 上場するということは、経営者の上司として投資家が現れるということです。 投資家の機嫌を損ねれば、経営者は株主総会でクビにされてしまいます。 ですから、投資家の機嫌を取ることが、経営者の一番の関心ごとになってしまうのです。

 「将来を見通せない」のは大きな問題で、会社には40年近くいるのに、経営者はこの1~2年のことしか考えていないのです。 経費削減・人員削減・投資抑制など、「会社が成長するのに必要なリソース」を削ってしまいがちです。

 

プライム上場企業が人気の理由

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 就活ではなぜプライム上場企業人気なのでしょうか。その理由は次の2つです。

  1. 上場企業は信頼性がある
  2. ステータス性がある

 「プライム上場企業に内定をもらった」といえば自慢になりますし、 「プライム上場企業で働いてる」といえばたいてい「すごい」と言ってもらえます。 これはどういう理由によるものでしょうか。

 1つは「上場企業は信頼性がある」ことです。 株式市場はこれ以外にも、東証スタンダードや東証ジャスダック、名古屋証券取引所、福岡証券取引所、 札幌証券取引所など、様々な証券取引所があります。その中でも特に東証プライムは審査が厳しく、 老舗の儲かっている大企業はだいたいこの市場に上場しています。

 東証プライムに上場できるということは、儲かっていて、公正な会計をしており、 信頼性の高い企業であると言えます。

 ・・・というのは建前であって、実際は赤字企業だったり、粉飾決算があったり、 不正会計が行われている会社もあります。インサイダー取引が行われるような、 情報漏えいしている企業もありますし、倒産寸前の会社だって東証プライムに上場しています。

 オリンパスはたびたび不正会計を指摘されていますし、 東京電力や旧JAL、シャープのように赤字を連発し、果ては倒産する企業も東証プライムに上場しています。

 もう1つの理由は「ステータス性」です。 日本銀行はじめ日本製鉄、JFE、電力会社、ガス会社、東芝、ソニー、パナソニック、ファナック、 富士フイルム、トヨタ、JT、鉄道会社、スーパーゼネコン等の超有名企業はほとんど東証プライム上場企業です。

 会社のことをよく知らない人に説明するとき、「東証プライム上場企業です」といえば、 「ああ、トヨタとか東京ガスくらいすごい会社なんだ」と思ってもらえるのです。 そのステータスが、よく知らない人には自慢になるのです。

 実際には同じランクでもなければ会社によって給料も全然違いますし、 そもそも赤字企業の場合だってあります。ステータス性=待遇が良いというわけではありません。

 単に「東証プライム上場」というだけで「すごい」と思ってもらえるほど「良いイメージがある」のにすぎません。 プライム上場企業に就職すれば安心ということはありませんし、単なるステータスにすぎないのです。

 

非上場の大企業

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 非上場有名企業・大企業はたくさんあります。 「東証プライム上場企業」は一流企業の条件ではありません。 これを条件にして就活すると、優良企業をたくさん見逃すことになります。

 非上場大企業の例を一覧にしました。

※リンクをタップするとMY就活ネット独自の企業研究が読めます

 非上場を貫く理由はやはり、「買収対策」や「資金調達の必要がない」です。 これらの会社はすでに莫大な利益をあげており、 新たな設備投資のために株券を発行する必要がないのです。

 上場したところで資金調達をしないのでは上場する意味がありませんし、 創業者や今の株主が株を売る気がないのであれば、上場しないでしょう。 こういった企業はまず、買収されることはありませんので上場企業よりは安心です。

 たいていの大企業は上場し、株式を発行して資金を集めて工場を建てるなどして拡大してきました。 そんな中、非上場の大企業は新株発行以外の独自の手段、 たとえば会社の利益や銀行融資などで資金を集め、会社を拡大してきました。

 どちらかというと非上場の大企業のほうがすごいと言えそうですが、 逆に言えば利益が出ないと会社を大きくできませんので、効率が悪いとも言えそうです。

 

プライム上場企業はすごい?

 「プライム上場企業はすごい」かというと、そうではないと言えます。 なぜなら「プライム上場」は、資金調達の一手段にすぎないからです。

 非上場の企業も自社の利益や銀行融資などの手段で資金調達が可能ですし、資金調達が終わってしまえば上場していても、非上場でも関係ありません。 むしろ上場していると経理が大変になりますから、資金調達の予定もないのに上場しているのは不便ばかりとなります。

 投資家ならともかく、サラリーマンに株価の騰落は関係ありませんし、上場のメリットは受けられないばかりか買収されるという不安要素になります。 なぜかステータス性はありますが、素人に自慢できる程度であり、その企業が本当にすごいかどうかは「東証プライム上場企業」というだけでは全くわかりません。

 もし従業員持株会に入るのであれば、東証プライム上場企業より、未上場の企業、 東証スタンダード、東証ジャスダック、名古屋証券取引所、福岡証券取引所、札幌証券取引所などに上場している企業のほうが、 サラリーマンにもメリットがあります。

 というのも、東証プライムに上場する際に株価が上がるからです。

 ベンチャー企業や地域密着型の企業はたいてい東証プライム以外の株式市場に上場しています。 しかし、会社の規模が大きくなってくるとその市場に上場を果たす会社が多いですし、 やはり株主である創業者としてはこのようにして、莫大な利益を得たいものです。

 そこで上場していない企業に就職し、従業員持株会に入会し、自社株を買っておくのです。会社の経営がうまくいって東証プライム上場を果たしたら、そのときには持っている株が大きく跳ね上がるかもしれません。

 以上より、就職先がプライム上場企業でも、就活生やサラリーマンにはほとんど関係ありません

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著者:村田 泰基(むらた やすき)
 合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。 その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。 →Xのアカウントページ