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「競争力」とは何か

 就活では「競争力のある会社」が1つのキーワードとして重視されます。 国際競争力があり、安定的に利益を出していて、給料も高く、皆が認める「良い会社」・・・ ところで、競争力とはなんでしょうか。

 改めて「競争力とは何か」と問われると、「そういえば競争力ってなんだろう」と、わからなくなってしまいます。 就活の重要な指標がこんなに曖昧なイメージのままでは、就活は失敗します。 そもそも競争力とは何なのか、どんな会社を選べば就活に成功できるのか考えてみましょう。



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競争力とは何か

 競争力には様々なものがあります。価格競争力、技術競争力、国際競争力・・・ 「競争力」はとても漠然とした概念です。これを簡単に理解するためには、競争力という言葉そのものの定義を考える前に、 「競争力があるとどうなるか」を考えることが有効です。

 「競争力」があるとどうなるでしょうか。競争力があると、自社製品が売れます。自社製品が売れるので儲かって、利益が出ます。 利益が出るので社員の給料は高く、会社も安定した経営ができます。就活生の視点では、 「競争力のある会社=高い給料・終身雇用」ということになります。

 次に自社商品を買う人の気持ちになって考えてみましょう。なぜ消費者はその会社の製品を買うのでしょうか。 要因はいくつかあります。「安いから」「品質が良いから」「デザインが良いから」「その会社のファンだから」 「コレクションに加えたいから」「皆が買っているから」「目的を果たすために必要だから」

 これらをまとめていきましょう。「品質がいい」の基準は人によって異なります。めっきが好きな人もいれば、 ステンレスが好きな人もいます。1年もてば十分だと思っている人もいれば、10年もたないと嫌だという人もいます。 要は、「商品を買う目的」によって「良い品質」は意味が変わってくるのです。

 「デザイン」も買う目的によって重視されたり、されなかったりします。 機械の中身を理解したいためにスケルトンの仕様を求める人もいれば、誰かに「オシャレでしょ」と自慢するために買う人もいます。 「デザイン」も「商品を買う目的」に含まれると考えてよさそうです。

 「会社のファンだから」「コレクションに加えたいから」に至っては品質や値段は関係ありません。 「使うかどうかはさておき、アップル社の製品を集めている」人や、「家電は全て東芝でそろえたい」人など様々です。 これも「コレクション」という「目的」を果たすために買うことだと言えます。

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 まとめると、消費者の視点では、「競争力のある会社=自分に必要なものを一番安く売っている会社」 ということになります。

 ここでようやく「競争力」を定義できます。

 「必要なモノを一番安く売っている会社で、かつ利益も出していて顧客満足度も従業員満足度も高い会社」 が「競争力のある会社」だと言えます。

 

価格競争力

 「競争力」と言われてまず思い浮かぶのは、「価格が安い」ことです。 同じモノを安く作って安く売れる会社を、「価格競争力のある会社」と呼びます。

 同じモノなら安い方がいいですよね。「コカ・コーラ」がコンビニAで150円、コンビニBで100円で販売されていたら、 誰もがコンビニBで買います。この場合、同じモノを安く売っているコンビニBには「価格競争力がある」ということになります。

 価格競争力とは「価格が安いから、他店よりお客さんを集めることができ、他店より売り上げがあがる」というわけですね。

 しかし、価格競争力がある会社は、本当に良い会社なのでしょうか

 価格競争力については、「なぜ安いのか」を考える必要があります。儲けを度外視して原価割れの激安販売をしているだけだとしたら、 そのコンビニBに就職すると給料が激安かもしれません。利益が出ないのであれば、ボーナスも出ません。 というのも、商売の最大の固定費は人件費だからです。 人件費を削って浮いた分を、安売りに使っているとすると就職先には選べませんね。

 「機械化やIT化が進んでいるから価格競争力がある」という場合も、いつまでも安泰とは限りません。 他の企業も死にもの狂いで機械化・IT化を進めて追いつこうとするからです。 いくら機械化・IT化を進めるにしても限界がありますし、あらゆる企業が限界まで機械化・IT化を進めた場合、 どの企業も同じ値段でモノを売ることができるようになります。

 今は一番安くても、いずれは追いつかれて同じモノを同じ値段で売る会社ばかりになり、 価格競争力は失われてしまいます。

 価格競争力のある会社を検討するときは、「なぜ安いのか」に着目してみましょう。 それは他社が真似できないことでしょうか。なぜ他社は同じ方法で安売りをしないのでしょうか。

 他社には真似できない価格競争力の理由は1つあります。それは、財閥系グループ会社の場合です。 三菱財閥、三井財閥のように、同じグループ会社だから材料を安く買える場合、 他社より安く製品を作れます。これは他社には真似できないことですね。

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技術競争力

 技術競争力とは、製品の品質に直結します。例えばパソコンの主要部品の1つであるCPUについて考えてみましょう。 パソコンのCPUにはメーカーがいくつかあり、なかでもAMDとIntelが競争を繰り広げていました。 当時はどちらも高品質のCPUを販売しており、パソコンにはAMDかIntelのどちらかのCPUが入っている状況でした。

 その状況を破ったのはIntelでした。IntelのCore2Duoはそれまでになかった新しい技術で、 同時進行で2つのタスクを処理できるCore2Duoは大人気を得ることになりました。 IntelのCPUはその後も高い技術力を武器に進化を重ね、Corei7、Corei5、Corei3シリーズでは独占的な勝利を飾ることができました。

 果たして、CPUはいつまでもIntelの独り勝ちなのでしょうか。 AMDもマルチコアCPUを開発していますし、技術とはいっても人間がつくるものです。 Intelの技術者をヘッドハンティングしてCPUを作らせれば、どの企業でも作ることが可能です。

 ソニーが世界にイノベーションを引き起こした「ウォークマン」は、今やアップルの「iPod」に取って代わられました。 家電と言えば「東芝」や「パナソニック」でしたが、今では「LG」や「サムスン」が世界的に売れています。 技術力があっても、いずれは他の会社に追い付かれ、追い抜かれてしまうのです。

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 他社には真似できない技術など、そうはないのです。 あるとすれば「職人技」でしょうか。切れ味の鋭い日本刀は、現代の技術力をもってしても再現ができません。 ロストテクノロジーの1つとなってしまうほど、真似できない技術でした。

 スイスの時計職人もそうです。その時計職人にしか作れない時計に価値が認められています。 しかし、企業選びの観点から言うと、職人技で売れている会社は選べません。 なぜなら、その職人が会社を辞めてしまえば武器がなくなり、技術競争力が失われてしまうからです。

 

国際競争力

 国際競争力は複雑です。国際競争力は値段や品質だけではありません。 為替や関税も関係する上に、「国家のイメージ」すら関わってきます。 日本製品を打ち壊すデモをテレビで観た人もいるでしょう。

 国際競争力を考えるときは、日本の基準でものを考えてはいけません。 なぜアメリカでドイツ車でも日本車でもなく、韓国車が売れているのでしょうか。 円安・ユーロ安も相まって品質の良いものを安く、ドイツや日本が売っているはずです。

 ウォン高に苦しむ韓国車が売れる理由を考えてみましょう。

 同じ性能の車を比較してみましょう。ここではデザイン性は無視します。 GM・フォルクスワーゲン・トヨタを比較したとき、一番安いのはトヨタです。 300万円のGM車と、250万円のトヨタ車なら、トヨタ車を買うでしょう。

 「ならば円安のおかげで安いトヨタ車は爆売れだ!」・・・と思うのは早計です。 (実際にはトヨタは過去最高益をたたき出すほど爆売れしていますが)

 アメリカは貧富の差が大きい国です。比較的工業やIT産業に優れる白人の地域は裕福ですが、 黒人奴隷を使役して農園を経営してきた南部では貧しい地域も多いです。 一般的にWASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)は裕福で、 その他の移民(黒人・アジア人・ヒスパニック)は貧しい国です。

 同じ性能で300万円のGM車と250万円のトヨタ車を比較すれば、トヨタ車が売れるのは当然です。 しかし、それは車を買う人が250万円を持っていればの話です。 200万円しか持っていない人にとっては、GMもトヨタも高いわけです。

 そんな中、性能は劣るけれども200万円で買えるヒュンダイ車があれば、 ヒュンダイ車に飛びつくのではないでしょうか。

 日本国内でもそうです。トヨタやホンダの車は、同じ性能のドイツ車に比べれば安いですが、 200万円も300万円も払えない人たちは軽自動車を買います

 品質・性能が良ければ売れるという話ではないのです。品質・性能が劣っても、 もっと低価格で買えるものを求める人たちが海外には大勢いるわけです。 車に何百万円もつぎ込める裕福な人は、海外にはそんなにいないからです。

 国際競争力を語る上では、誰をターゲットにどれくらいの品質のものをいくらで売るかをはっきりさせなければなりません。 ターゲットによって売れる数は異なりますし、時には品質・性能を落として低価格にするべき場合もあります。 この意味では、国際競争力のある会社は実は少ないのではないでしょうか。

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著者:村田 泰基(むらた やすき)
 合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。 その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。 →Xのアカウントページ