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就活と景気の関係

 日経平均株価が2万円を突破したと思いきや、中国の上海市場の暴落を発端に世界的株安になっています。 今日はほとんどの指標が大幅マイナスを見せており、アベノミクスの行く末以前に世界経済がどうなるか先行き不透明です。 さて、就活景気は連動することで知られています。今後の就活はどうなっていくのでしょうか。



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就活と景気は連動している

 就活景気は連動しています。 ここ数年の内定率と日経平均株価を見てみましょう。 ここでは当時の大企業の面接開始の1ヶ月後である5月の内定率と、日経平均株価の年間最安値を見比べてみます。

卒業年度5月の内定率日経平均株価(最安値)備考
2008年卒74.3%14,669円リーマンショック前
2009年卒69.9%6,994円リーマンショック(10月)
2010年卒50.9%7,021円政権交代(自民→民主)
2011年卒46.8%8,796円
2012年卒40.3%8,135円
2013年卒30.7%8,238円
2014年卒39.3%10,398円政権交代(民主→自民)
2015年卒47.7%13,885円

 株価が最低を示したのが2008年(2009年卒)のリーマンショック直後ですが、就活戦線が最悪だったのは2012年(2013年卒)です。 少し時差がありますが、景気が低迷を続けて徐々に内定率が悪化していったというものです。

 一方、2013年(2014年卒)に再度の政権交代が起こり、自民党政権によるアベノミクスの期待により株価が高騰し、 内定率も回復傾向にあります。内定率は最低水準を脱したとはいえ、まだまだリーマンショック前までは回復していません。

 株価が下がって急に内定率が下がるわけではなく、だんだん下がっていきます。 一方で株価が上がっても急に内定率が上がるわけではなく、だんだん上がっていきます。

 ここから言えることは、株価に引っ張られる形で内定率が変動するということです。 就活景気連動していると言ってよいでしょう。

 

なぜ景気が悪くなると内定率が下がるか

 景気が悪化すると、内定率が下がるのはなぜでしょうか。

 まず、株価が下がることで国民全体の資産が目減りします。株式投資は何も大富豪だけのものではなく、 企業や投資ファンド、証券会社、サラリーマン、主婦など様々な人が参加しています。 特に景気の良い時は一般人もお財布に余裕があるため株式投資をします。

 しかし、株価が下がると損をしますので、株価が下がり始めたら持っている株を売って現金に変えます。 下がってから売ると株式投資は失敗です。損を抱えて株式市場から退場することになります。 当然、お金が減っているわけですから消費を抑えようとします。

 もともと景気が良かった時は株式投資もうまくいき、儲けたお金で買い物をしていました。 しかし株価が下がると買い物をする人が減り、企業の売り上げが低迷します。

 企業の売り上げが低迷すると、社員に払う給料やボーナスが減り、社員の使えるお金も減るため、さらに消費が滞ります。

 このようにみんなの収入が減るスパイラルに陥り、企業もなんとか利益を出すためにコストを抑えるようになります。 本来ならリストラをして社員を減らしたいところですが、日本の法律ではリストラはなかなか難しいものです。 またこれまで一緒に頑張ってきた社員をクビにするのも、心苦しいですね。

 そこで、リストラの代わりに新卒採用を減らします

 このようにして景気悪化の苦い汁は、新卒就活生がなめさせられるわけです。 2013年卒の就活生は景気悪化の最低の苦い汁をなめさせられたと言えますね。 就職留年が一番流行したのもこのころです。

 

就活は世界情勢に翻弄される

 2009年卒以降の就活が非常に厳しくなったきっかけは、リーマンショックに端を発する世界同時株安です。 学生の努力とは関係のないところでサブプライムローン問題が浮上し、アメリカのメガバンクとも言えるリーマンブラザースが破綻したことにより、 日本の就活生が苦労をしたわけです。

 もちろんアメリカの不動産バブルもアメリカ一国の責任ではありません。アメリカのバブルは実は、日本がアメリカ国債を大量購入したことが原因です。 日本がアメリカ国債を大量購入したのは、アジア通貨危機による円高を是正するための措置であり、 アジア通貨危機の原因はアジアのバブル崩壊であり、アジアのバブルを引き起こしたのはアジアに工場を建てまくった日本企業だったりします。

 日本企業がアジアに工場を建てまくったのはプラザ合意後の円高不況のせいであり、プラザ合意が行われたのは・・・ と、何が悪かったのかを考え始めるとキリがありません。

 しかし、これらの経済情勢は日本の大学生の知らないところで起きているものです。 この負の連鎖が回りまわってなぜか就活生が不幸を被るのです。

 たまたまその時期に生まれたというだけで、運悪く内定率の低い時期に就活しなければならなかったり、 たまたま遅く生まれたために、運良く内定率の高い時期に就活できたりするのです。

 「社会に出ると理不尽なことが多い」とよく言われますが、なんと社会に出る前から理不尽な景気に襲われているのです。

 しかし大人たちはその理不尽な状況というものをあまりよく理解してくれません。 というより、自分たちは割と景気の良い時代に就職しているため、今の就活戦線を理解できないのです。

 親世代にも心無いことを言われる場合だってあります。それでも就活の時期はやってきます。 特に今は中国の景気も悪化しつつあり、ギリシャの問題もあり、北朝鮮と韓国の関係も悪化しています。 いつまた世界恐慌になるかもしれず、不安定な時代です。

 その意味でも世界情勢に注意し、株価も見つつ、就活の対策を考えていきましょう。

 

株価が下がっても突然内定率は悪化しない

 上のデータを見るとわかるように、株価が下がっても突然内定率は悪化しません。 というのも、人事部がまとめる採用計画は、その前の年度に既に決定しているものであり、 株価が多少下がり始めた程度で変えられるものでもないからです。

 株価はいつ暴落するかわかりません。逆に言えば、いつ元通りになるかもわからないのです。 多少株価が下がったくらいで採用計画を取り消していようものなら、いつまでたっても新卒採用ができず、 会社は高齢化していきます。

 そのため株価が新卒採用に影響が出始めるのは、株価が暴落した翌年からです。 それも翌年急激に悪化するわけではありません。この時点ではまだ、いつ株価が元に戻るかわからないからです。

 2008年(2009年卒)に起きたリーマンショック後、内定率最悪の年である2012年(2013年卒)までは4年もありました。 上がらない株価に対して徐々に絶望感が増して、企業が採用活動を控えるわけですが、 今すぐ株価が暴落したからといって今年・来年の内定率が急激に悪化するわけではありません。

 むしろ今の日本はオリンピックを控え、まだまだ景気が良くなる可能性を秘めています。 特に東アジアもEUも不調の今、日本企業が大活躍する可能性は高いのです。

 確かに今は株価が急落し、世界的に株安状態です。しかし、株安も一過性のものかもしれませんし、 このまま下落が続いたとしてもすぐには内定率は悪化しません。 気を取り直して就活の対策を考えましょう。

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著者:村田 泰基(むらた やすき)
 合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。 その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。 →Xのアカウントページ