若者が車を買わない理由~今の若者は貧乏なのか?
若者の車離れが叫ばれて久しいですが、自動車業界に就職するなら避けられない問題です。 なぜトヨタや日産、ホンダなどの自動車メーカーは若者の車離れを止められないのでしょうか。
自動車業界の面接では若者の車離れについて質問されることも珍しくありません。 MY就活ネットでは、若者の車離れを、若者の観点から解説します。
目次
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車を買う理由
そもそも車を買う理由はなんでしょうか。 人が車を買う理由は概ね以下の理由です。
- 通勤に使うから
- 仕事で使うから
- 生活に使うから
- 遊びに使うから
- ステータスになるから
車を買う理由は、都市部と地方部で異なります。
都市部では通勤は、基本的に電車やバスなどの公共交通機関です。 仕事で車を使う場合も、多くの若者は会社勤めですので社用車か、会社の経費でレンタカーを借りて使います。 しかし、地方部では電車やバスがなく、車で通勤するのが普通です。
都市部では買い物でスーパーに行く際も、徒歩圏内にスーパーがあり、 ショッピングも電車やバスで済ますことができます。大きい買い物は宅配サービスを使えばいいですし、 アマゾンや楽天などの通販サイトを使うのも便利です。
しかし地方部ではそうもいきません。田舎には徒歩圏内にスーパーどころかコンビニもない場合が多く、 車がないと買い物もできない状態です。
車を使った遊びといえば、遠くのショッピングモールに行く場合や、ゲームセンターなどの娯楽施設に行く場合、 ドライブやツーリングで小旅行する場合があります。
しかし都市部ではショッピングも娯楽施設も、電車やバスで行くことができますし、 ドライブやツーリングという趣味は以前ほど一般的なものではありません。
車を所有することには、ステータス性があります。 例えば軽自動車は低所得、1300~1600CCクラスが普通、1800CCクラスの車はプチリッチ、 2000CC超は高所得といった具合に、車種でその人の格がはかれるというものです。
いかにも昭和的な考え方ですが、持っている車がステータスになるという考え方は、若者にもあります。 同期の誰かがアテンザを買えば、みんなアテンザ以上の車を買いたがります。 車種で「あいつには負けたくない」という意識が働くのです。
車のステータス性は都市部も地方部も同じですが、地方部では通勤や生活にも使うという特徴があります。
以上より車を買う理由は、地方部では通勤・仕事・生活・遊び・ステータスと多い一方で、 都市部では遊び・ステータスの2つしか理由がないことになります。
つまり、地方部はともかく都市部では、車は生活必需品ではなく贅沢品になっているのです。
車を買わない理由
都市部では車を買う理由が少ない一方で、都市部・地方部に共通して車を買わない理由はたくさんあります。
- 車が高いから
- 維持費が高いから
- 危険でリスクが高いから
- 必要ないから
- レンタカーやカーシェアリングを使うから
車を買わない理由として費用はゆゆしき問題です。いくら車がほしくても、お金がなければ買えません。 免許を取るにも数十万円かかりますし、新車を購入しようものなら200万円~300万円必要です。 バブル世代と異なり、気軽にローンを組むということもリスクの高い時代です。
維持費もかなりかかります。都市部では駐車場代が月2万円を超えるような地域も多いですし、 車検や任意保険、自動車税や自動車重量税、ガソリン代、修理代などの費用がかかります。
車を買わない理由として、「危険でリスクが高い」ことも注目です。 気を付けていてもタイミング悪く信号が変わってしまうこともありますし、 慣れない場所では標識を見落としてしまうことだってあります。
交通ルール違反には反則金や罰金が科せられますし、 自転車や歩行者が飛び出してきても、事故が起きれば車に責任がのしかかります。 任意保険に入っていても刑事罰は受けることになりますし、維持費以外の突然の出費にもつながります。
「車は必要ない」とまで言われてしまえば身もふたもありませんが、 都市部はもはや遊びとステータス以外の理由で車は不要です。 それだけでなく、地方部でも実は車がなくても生きていけます。
「車がないと生きていけない」なんていいますが、高齢世代の女性は免許を持っていないことが多いです。 どうやって生活しているのかというと、自転車です。田舎は自転車でどこへでも行きます。 田舎では車があると便利ですが、ないならないなりに生きていけるのです。
そしてレンタカーやカーシェアリング等の代替があるという点にも着目しましょう。 タイムズの駐車場にはカーシェア用の車が配備されており、駅前などにレンタカーもあります。 車を買わなくても車に乗れる時代なのです。
自動車業界のマーケティング不足
自動車業界はながらく「マーケティング」を軽視してきました。
マーケティングは顧客が「真に求めていること」を研究して、開発部門・生産部門・営業部門を巻き込んで商品を生み出し、 プロモーションまで一貫してブランドを創って育てることです。
これができていなかったということは、要は消費者を置き去りにした技術開発競争を行っていたのです。
よく「走る喜び」と言います。自動車メーカーは消費者に対し、「走る喜び」と称して、 高速度でも安定した走行性能というものを提供してきました。
しかしよく考えてみてください。日本のどこでそんなにスピードを出すんですか?
この点で一歩先を行っていたトヨタは、コンパクトカーやハイブリッドカーで消費者の心を鷲づかみにできたのです。 消費者は本当は、「速い」ことよりも「狭い道路を楽に通れる」「ガソリン代が安くなる」ほうがよっぽど重要だったのです。
ですが、これはパイの奪い合いにすぎません。これまで「仕方なく」速い車に乗っていた人たちが、 トヨタの車に飛びついただけの話であって、新たに「車を持っていなかった人」を魅了したわけではないのです。
生活必需品でなくなってきた車を若者に売るのには、若者が今何にハマっているのか考えなければなりません。
自動車業界のライバルはインターネット!?
自動車業界にはライバルが多く、若者の車離れを加速させるサービスが世の中にあふれています。 電車やバスなどの公共交通機関はもちろんですが、インターネットも若者の車離れの原因の一つです。
というのも、インターネットの登場により通販が使いやすくなり、 インターネットを通じてコミュニケーションもとれ、ゲームもでき、暇つぶしもできるからです。
都市部では車を買う理由が遊びとステータス性だけです。このうち、「遊び」はインターネットにシェアを奪われています。 昔な車やバイクでドライブ・ツーリングに行っていた人も、自宅でニコニコ動画を見ていたり、 2chまとめサイトを読んでいたり、スマホでラインをしていたり、オンラインゲームをしていたりするわけです。
インターネットの登場で趣味が多様化しました。アニメやドラマが見放題なサービスもありますし、 テレビゲームをネットにつないで友達と通信対戦ができたり、ショッピングはアマゾンや楽天で済ませられたりと、 わざわざ車に乗ってでかける必要性が薄れているのです。
インターネットだけが原因ではありません。レンタカーやカーシェアリングのサービスも重要な原因です。 趣味の多様化に伴い車に乗る機会が減れば、週に1回、月に数回しか乗らない車のためにローンや駐車場代、保険料、 税金などを払い続けるのはバカらしいですね。
しかしレンタカーなら1日5000~7000円程度、カーシェアリングなら好きな時に乗った分だけ料金を払えばいいのですから、 乗る回数が少ないのであればその方がオトクです。昔はこのようなサービスが充実していませんでしたから、 新車を買わざるを得ませんでした。しかし今はわざわざ新車を買わなくてもいいのです。
さらに「中古車」という選択肢もあります。新車を買っても1回乗ればもう中古車です。 300万円で買った車も、売るころには半分の価値もありません。 ならば状態の良い中古車を150万円くらいで買ったほうがよっぽどオトクというわけです。
そもそも新車を買えるだけのお金を持っていない若者は、中古車を買わざるを得ません。 私の地元の友達も、ほとんどが中古車です。新車を買っているのは、車以外にお金を使わない友達や、 大企業に就職した友達くらいです。
いくら車が必要な理由があったとしても、新車である必要はありません。 それまで新車を買っていた層も、レンタカーやカーシェア、中古車にシフトしているのです。
国産車にステータス性がない
車を買う理由の一つに「ステータス性」を挙げました。 しかし国産車ではステータス性が足りないのが実情です。 もちろんこれもマーケティングの失敗です。
実は国産車のマークXやアテンザの価格と、外車の価格はそれほど変わりません。 外車を買えるお金がある人はマークXやアテンザを買うことだってできるのです。 しかし、ステータス性を求める人は、国産車を買いません。
ステータス性と言いますが、車を買う人はいったい誰に自慢するために車を買うのでしょうか。
それは、女性です。
合コンやデートなどで自分の持っている車を自慢するわけですが、 「マークX」や「アテンザ」といっても女性にはあまり通じません。 「準高級車」は国産車にもたくさんあるわけですが、車に詳しくない女性は知らないのです。
しかし「外車」なら女性にも通じます。「イタリアの車」「ドイツの車」と言えば、 軽自動車やカローラより高いのはわかりますし、「ヨーロッパ」というだけでオシャレに感じるものです。 「マークX」「カムリ」「アテンザ」というよりも、「フォルクスワーゲン」「フィアット」と言ったほうが女性の食いつきが良いのです。
トヨタのエンブレムがついているより「VW」や「BMW」のロゴがついているほうが、 「他の車より高級」であることが一目瞭然ですし、女性にもわかりやすく、走行中にも目立つわけです。 ステータス性としては外車のほうが優秀なんですね。
さらにはレクサスやクラウン、シーマなどの国産高級車には悪いイメージがつきまといます。 政治家や犯罪組織のイメージですね。国産高級車には怖い人が乗っているという偏見があります。 いくら高級車でも、「オシャレじゃない」ならステータス性がなく、買われません。
日本社会は「評価は後から勝手についてくる」とレースへの出場こそするものの、 ブランド価値を高めるプロモーションは行わず、お金さえ出せば誰にでも売るということもあり、 オシャレなイメージがまったくないのです。
車好きな人たちならともかく、車を自慢したい相手が知らないのでは、 外車を買うしかありませんよね。
「遊び」はインターネットにシェアを奪われ、「ステータス性」は外車にシェアを奪われているのです。
今の若者は低所得?
若者の車離れとあわせてよく言われるのが「若者の貧困化」です。派遣労働が解禁され、 派遣労働者が増えています。景気の低迷により仕事がない若者も多く、 昔なら正社員がやっていた仕事もパソコンに取って代わられ、正社員として就職できない若者は増え続けています。
しかし、急激に給料が下がったわけでもなければ、物価が上がったわけでもありません。 派遣社員でもそこそこの給料がもらえますし、正社員の給料も昔とそれほど変わりません。 むしろ大卒初任給は昔より上がっています。若者が低所得になったとは言えません。
昔の若者もお金はありませんでしたが、ローンを組んで買っていました。 ですが、今の若者はそれをしません。
昔の若者は給料が安い年齢から車を買っていたのに、今の若者はなぜ車を買わないのでしょうか。
それは、若者のローン離れに原因があります。
今の若者はローンが組めない
今の若者がローンを組まなくなったのは、バブルの後遺症で審査が厳しくなったというのも1つですが、 何より昔と今で決定的に違うのは、「将来に希望を抱いているか、不安を感じているか」です。
高度経済成長期からバブル経済までは、イケイケドンドンで作れば売れる、頑張れば昇給する、 多額のボーナスが入る、好景気はずっと続くといった、「一億総楽観視」でした。
要は、来年以降の給料を当てにしてローンを組むということが、昔はできたのです。
しかしバブル経済が崩壊し、給料は伸び悩み、ボーナスは減り、少子高齢化で年金問題が浮上し、 会社は倒産し、リストラが行われたり派遣切りが行われるなど「将来の不安」が増大しています。 特に派遣社員はいつ収入がストップするかわかりません。
そんな状況でローンが組めるでしょうか?
車を買うのに5年ローンを組んだとすると、5年間は毎月一定額を払い続けなければならないわけです。 支払いが滞れば差し押さえにあったり、クレジットカードが停止されたりとリスクが高く、 会社を辞めることもできなければリストラにあっても困ります。
5年間毎月一定額を支払い続ける事が出来るかどうか、わからないのです。
バブル崩壊後はローンの危険性が知られるようになり、特にいつ収入がストップするかわからない時代に、 気軽にローンを組めるわけがないのです。
昔の若者もキャッシュで車を買っていたわけではなく、ローンを組んで車を買っていました。 しかし今の時代、気軽にローンが組めないために、車を買えないのです。
そんな派遣社員や期間工の制度を作り出したのは、まぎれもなく自動車メーカーです。 正社員だった工員を派遣社員や期間工に置き換え、若者に将来不安を抱かせながら、 「若者が車を買わない」と嘆いているのですからおかしな話ですね。
若者の車離れは社会の発展の証拠
若者の車離れは自動車業界にとってみれば由々しき事態ですが、 社会全体から見れば悪いことではありません。若者の車離れは、社会が発展している証拠なのです。
まず、「公共交通機関の充実」です。車に乗れない人、乗りたくない人も安全快適に生活することができるようになりました。 「しかたなく」車を買っていた人が、車を買わなくてよくなったのです。 車を運転するより電車やバスに乗った方が確実に安全ですし、料金も安いです。保険料も駐車場代も取られませんし、税金も消費税だけです。
「趣味の多様化」も社会全体にとってはいいことです。大人の趣味はドライブしかなかったのが、 今ではいろんな趣味があります。1億の国民がいながら1億全員がドライブ趣味だと気持ち悪いですね。 1億全員が自分に合った好きな趣味を選べるようになってきたのですから、確実に社会は進歩しています。
そして「レンタカー・カーシェアリングの充実」も社会の発展がうかがえます。 レンタカーやカーシェアリングは、週に1回、月に数回しか車に乗らない人をターゲットにサービスを行っています。 「ちょっとしか車に乗らないのに車を買うのはバカらしい」と思っていた人たちのニーズを掘り起こしたのです。
「将来の不安によるローン離れ」も重要です。将来が不安でローンを組まないだけでなく、 ローンそのものの危険性が認知されてきているのです。「借りればいいだろう!」と軽く考えていた世代は、 借金で失敗している人も多いです。ローンの危険性が若者に伝わり、消費者が賢くなったと言えるのではないでしょうか。
また「外車志向」も良い傾向です。日本はモノづくりこそ技術的に世界を圧倒している一方で、 「オシャレ感」「雰囲気」「デザイン」では欧米に圧倒されています。 iPodやiPhoneなどのアップル製品の大流行、輸入雑貨の流行は顕著です。
「オシャレ感」や「雰囲気」を実現している国内企業といえば、ディズニーランドのオリエンタルランドくらいなものでしょうか。
「外車志向」は日本に足りないものを明らかにしてくれます。ただ「良いもの」というだけでは売れないのです。
確かにトヨタやホンダといった世界的に有名な企業は莫大な税金を納めていますし、 他の国内企業への影響も計り知れません。そのためトヨタが「若者の車離れ」を問題にすれば、 政治やマスコミも「若者の車離れ」を問題にします。
しかし若者の車離れの原因はこれまで述べてきたように「維持費が高い」「公共交通機関の充実」「趣味の多様化」「ローン離れ」 「レンタカー・カーシェアリングの充実」「国産車にステータス性がない」といった理由です。 若者を悪者にするのは簡単ですが、問題の本質をとらえられていません。
特に人口が首都圏に集中している今、車は生活必需品ではなく贅沢品であることを認識し、 「遊び」「ステータス性」にもっと注力する必要があるでしょう。
11月の今から最短で内定をもらうには?
志望企業の内定者はどう書いた?内定エントリーシートを見よう!(その1)
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著者:村田 泰基(むらた やすき)
合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。
その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。
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