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「経費で落とせる」ってどういう意味?|それ横領だから!

 自営業者や会社役員、サラリーマンがよく「経費で落とせる」と言いながら買い物をします。 この「経費」とはいったい何なのでしょうか。

 「経費で落とせる」は、まるでお金をかけずに物が買える魔法の言葉のようです。 もちろん、タダで買えるわけではありません。誰かがお金を払うわけですが、それは買った本人ではありません。 お金を払うのは会社です

 ではそもそも、経費とはなんでしょうか。



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経費とは?

 経費とは、売上をあげるためにかかった費用のことです

 経費の中には「原価」があります。例えばスマホメーカーなら部品の購入代、研究開発費、宣伝広告費、工場の職人の給料、 設計技術者の給料など、製品の製造にかかったコストですね。

 売上高がすべて利益なわけではありません。売上高から製造・販売にかかったコストを差し引いたものが利益です。 このコストのことを「経費」と呼びます。

 利益には法人税がかかりますが、経費には法人税がかかりません。 そのため売上高が多ければ、従業員ボーナス(経費)を増やして利益を減らし、 法人税を安くするなどの節税が行われます。

 「税金を払うよりは給料を払ったほうがいい」という経営者ならば、 給料を上げて経費を増やし、課税対象である利益を減らすわけです。

 ところで「経費で落とせる」とは、買い物をしても「経費」として計上できるという意味です。

 ではなぜ買い物が「経費」になるのでしょうか。

 それは、原価に「販管費」が含まれることに理由があります。

 販管費とは「販売費及び一般管理費」の略で、材料や給料の他に営業活動にかかった費用や、営業部員の給料経理部や法務部など管理部門の給料本社の電気代や事務用品代など、 販売にかかったコスト会社を維持するのに必要なコストをいいます。

 この「販管費」を使って私的な買い物をするときに、「経費で落とせるから大丈夫!」などと言うわけです。

 

「経費で落とせる」とは?

 「経費で落とせる」とはどういう意味なのでしょうか。

 テレビや映画などでは、会社役員やサラリーマンがキャバ嬢にプレゼントをねだられ、 「経費で落ちるから大丈夫だ」と自分に言い聞かせて高級バッグや高級財布を購入し、 領収書を書いてもらいます。

 仮にプレゼント代が経費で落とせる場合、「会社の立替払」として、 いったんは自分でプレゼント代をお店に支払います。後日会社で「会社の経費を立て替えた分を請求します」と、 会社に請求書を書くのです。

 買い物を「経費で落とす」というのは、買い物をして領収書をもらって会社に提出し、 「会社を維持するのに必要なコストだ」「営業活動に必要なコストだ」と言って、 会社にお金を請求するという意味なのです。

 さて、キャバ嬢へのプレゼント代は経費といえるでしょうか。 キャバ嬢にプレゼントをしなくても製品の売れ行きには関係がありません。 もちろん会社の存続にも関係ありませんし、経費にはなりません。

 しかし、ある程度の権限を持っているサラリーマンや会社役員の場合、 領収書に「お土産代として」などと書いてもらい、 いかにもお客さんへのお土産を購入したかのように見せかけて会社にお金を請求するという、詐欺まがいの行為が行われる場合があるのです。

 出張でタクシーを使うからと、会社からタクシーチケットを受け取っているにも関わらず、 「電車で帰るのがしんどいから」とタクシーチケットを使ってタクシーで自宅に帰るなど、 会社の経費を不正に使っていることが、多々あります。

 テレビや映画で言われる「経費で落とせるから!」は不正行為である場合がほとんどです。

 自分のために買ったもの、支払ったものを、「会社の立替払だ」と嘘をつくというものです。 もちろん「横領罪」という犯罪なのですが、金額が小さければバレにくいという事情もあり、 私的な買い物を「経費で落とす」行為は横行しています。

 例えばコンビニで自分のためにコーヒーを買って、「お土産代」として代金を会社に請求したり、 社内で飲み会を行って特に仕事の話もしていないのに「会議用食事代」として代金を会社に請求したりするのです。

 会社での階級が高ければ高いほど、「この領収書は本物か?」と聞かれなくなります。 課長、部長、役員の順にだんだん会社の経費を使い放題になってくるのです。

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「経費で落とせる」もの

 特に自営業者会社役員経費で落とせる範囲が広いです。

 課長や部長クラスではまだ、経理部の部長から「この領収書はなんだ?」と問いただされる可能性があり、 請求を却下されてしまう場合もあります。しかし、会社役員に文句を言える人はいませんし、 自営業者ならそもそも誰にも文句を言われません。

 税務署の審査にさえ引っかからなければいいわけですから、一人でキャバクラへ行ったにも関わらず、 「交際費だ」と言って代金を会社に請求したり、キャバ嬢へのプレゼントを購入したときも、 「お土産代だ」と言って代金を会社に請求したりするのです。

 特に自営業者の場合は、友達と食事に行って「会議用食事代」として領収書をとっておき、 確定申告の際に「経費がこれだけかかったから利益はこれだけしかありませんでした」と、 利益をごまかし、支払う税金を安く抑える手法が取られます。

 会議用食事代に限らず、仕事とは関係のない文房具を買ったときに「消耗品費」、 友達に手紙を送る際に「郵送費」などと、会社と関係ないのに会社のために行ったかのように見せかけて、 税金を支払わないという手法が使われます。

 この詐欺まがいの行為はもちろん犯罪です。「バレなきゃいい」と安易に考えている人が多く、 なんでもかんでも「経費」扱いにして買い物をすればいいと思っている場合があります。

 もちろん、なんでもかんでも許されるわけではありません。 そもそも交際費は経費に含むことができない法律になっており、 会社に請求はできるものの、会社は交際費の分も税金を支払わなければなりません。

 そのため会社は交際費について厳しく監視しています。

 他にも会議用食事代があまりにも多ければ税務署からつっこまれますし、 「買ったものを本当に仕事専用で使っているか」を確認されたりします。 テレビや映画ほど自由のきくものでもないのです。

 

経費で落とせば会社が損をする

 「経費で落とす」とはつまり、自分の買い物の代金を会社に支払わせるわけですから、 会社の経費が増えれば会社の利益が減ります。 つまり、会社が損をするというわけです。

 「自分の財布が痛まないからいいや」と思っている人が多いですが、 回りまわって自分の不都合になっていることに気づかないのが滑稽なところです。

 本来、利益がたくさん出れば社員の給料が上がっていたかもしれません。 しかし、余計なものを買って経費に計上することで利益が減るわけですから、 社員の給料を上げる余裕がなくなっている場合も考えられますね。

 「あの部署の課長もやってるからいいだろう」と他の部署の課長が「会議用食事代」を連発して飲み会を開きまくると、 経費競争になって会社の利益はどんどん減っていきます。 最終的に会社からこう言われます。

 「儲かっていないから給料を減らします」と。

 経費はお金が湧いて出てくる魔法の言葉ではありません。 使った分だけ会社が損をして、回りまわって自分の損になっているのです。 あまり「経費」に夢を持たないようにしましょう。

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著者:村田 泰基(むらた やすき)
 合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。 その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。 →Xのアカウントページ