人口が首都圏に集中する理由
東京都の去年の人口は、転入が転出を上回る「転入超過」が、おととしよりも3万人余り増えて6万8000人余りとなり、調査をまとめた総務省は「コロナ前の東京一極集中の動きに戻りつつあるのではないか」としています。
このほか「転入超過」となったのは、神奈川県、埼玉県、大阪府、千葉県、福岡県、滋賀県です。
2023年、人口流入の多かった都市は、東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府、千葉県、福岡県、滋賀県だったそうです。 特筆すべきはやはり首都圏の人口集中でしょう。 埼玉県や神奈川県、千葉県に引越しをする人の大半は、東京から近いところに住みます。
なぜ首都圏に人口が集中するのでしょうか。
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首都圏は日本の最先端
首都圏が日本の最先端であることが、人口集中の要因の一つです。
およそあらゆるものは、東京で始まります。 流行のファッションにしても、企業の新製品にしても、ゲームセンターのゲーム機にしても、 駅の設備も、新しい自販機も、新しいサービスも、すべて東京から発信されます。
流行が確実な新製品を開発すると、まず東京で試します。 というのも、東京は人口が多いため最もお客さんが入るためです。 東京でビジネスをして稼いだお金で、地方にも出店したり、進出していったりするのです。
東京と地方の格差は、東京へ旅行し、山手線に乗ってみればよくわかります。
大阪の場合、大阪へ旅行へ行ったときはどこを回るのでしょうか。 梅田と難波、天王寺くらいでしょうか。 大阪環状線に乗るまでもなく、地下鉄御堂筋線で3駅を回れば大阪観光は終わりです。
一方で東京はどうでしょうか。渋谷や原宿でファッション店や雑貨店を巡り、 池袋で昼食を取り、上野の動物園にいったり、自由が丘でスイーツを楽しみ、 秋葉原で遊び、夜は新宿や新橋、銀座などで夕食を取るのです。
皇居や都庁、浅草といった観光スポット、東京タワーや東京スカイツリーといったランドマーク、 ちょっと足をのばせば横浜へ行けますし、東京ディズニーリゾートもあり、 遊ぶところはいくらでもあります。
遊ぶところだけでもこれだけの差があります。 大企業やベンチャー企業の本社も東京にあり、名だたる大学も東京に密集しています。 中央省庁などの政府機関も東京に集まっており、東京だけで国がつくれます。
新しいビジネスや技術は東京から発信されます。幕張メッセでは新技術の発表会がよく行われますし、 おもちゃやゲームの世界でも東京でホビーフェアが開催され、 全国から人が集まります。
首都圏は日本の最先端なのです。
首都圏は生活が便利
首都圏は人口集中しており、人口過密状態だとも言われます。 しかし、その人口過密が生活を便利にしてくれるのです。
田舎の場合、「最寄りのコンビニまで車で20分」なんて地域もあります。 これは人口密度が低く、コンビニが2軒も3軒も立ってしまったら少ないお客さんの取り合いになってしまい、 儲からないことが確実だからです。
そのため田舎にはスーパーやコンビニも、1つの町に1ヶ所程度しかありません。 スーパーやコンビニに行くにはどうせ車を出さなければなりません。
イオンが出店するとその地域のお客さんはすべてイオンに集中し、 ますますコンビニやスーパーは戦えなくなっていきます。
一方で首都圏では、大型マンションに何百人という人が住んでおり、 そんなマンションが無数にあります。人口密度が高く、マンション群の中にコンビニが1軒あるだけではとてもお客さんをさばききれません。
首都圏ならコンビニの隣にコンビニを立てても儲かるのです。 遠いイオンまでわざわざ車を出して行くより、隣のスーパーに歩いて行った方が楽です。 首都圏は買い物が楽で、生活が便利なのです。
首都圏は発達した鉄道網が便利
首都圏は鉄道網が非常に発達しており、移動が便利です。 東京の路線図を見れば一発でわかると思います。縦横無尽に鉄道路線が入り乱れています。
大阪は南北の移動は優れていますが、東西の移動が難しく、 いちいち天下茶屋や本町まで戻ってからでないと、西から東へ移動することができません。 名古屋も同様に、いろんな場所へ行くには栄まで戻らなければなりません。
しかし、東京ではあらゆる駅でいろんな路線に乗り換えることが可能です。 千葉から東京に行くだけで様々な行き方があり、空いている路線を選んだり、 次の乗り換えが便利な路線を選んだりできるのです。
移動が便利なため、首都圏ではどこを最寄駅にしても問題ありません。 どの駅の近くに本社を建てても、移動で不便しないのです。
大阪や名古屋などの地方都市ではだいたいビジネスの場所は限定されています。 大阪なら淀屋橋、本町あたりです。その他の地域へ行くと移動が不便でビジネス街も閑散としています。
ビジネスも、ファッションも、遊びも、仕事もすべて首都圏に集中するのは、 鉄道網に秘密があるのかもしれませんね。
首都圏で鉄道網が発達したのは、やはり利用客が多いからです。 どこに鉄道を敷いてもだいたい採算がとれたのです。
地方都市の場合、鉄道を敷いても利用客が集まるかどうかわかりません。 しかし、東京なら人口が多いためにいろんな路線を敷くことができたのです。
人口集中がさらなる集中を呼ぶ
ここまで説明したように、人口が多いから日本の最先端になったことと、人口が多いから生活が便利になること、 人口が多いから鉄道が便利になることを説明しました。
すでにお分かりかと思いますが、人口が集中するから、さらに人口が集中するという、 東京は良い循環にはまっているのです。
もちろん「人が多すぎて嫌だ」という方もいるでしょうが、首都圏は生活が便利で、遊ぶところがたくさんあって、 電車でどこへでも行けて、仕事もあり、日本の最先端であるという様々な魅力があります。 人口が集中することで、ますます便利になり、仕事ができ、新しい技術が生まれるのです。
この先もどんどん東京が便利になり、楽しいことが増え、人口も増え続けるでしょう。 首都圏は拡大を続け、一極集中はどんどん進行していくと考えられます。
一極集中は悪いことではない
一極集中は悪いことではありません。
国会や政治の場では「一極集中を解消する」としきりに議論されています。 地方から来た政治家は、地元の投票によって当選していますから、 地元の利益を第一に考えるのは当然です。
確かに地方自治体にとっては人口をどんどん東京に取られます。 地方で学校を建て、子どものためのイベントを開催し、教育をするわけですが、 大人になると東京に出て行ってしまいます。
県で働いてもらわないと所得税や法人税、住民税がすべて東京に取られてしまうのです。 財政難に苦しむ地方自治体にとっては由々しき問題です。
だからといって住民の引越しを規制することはできませんし、絶対にやってはならないことです。 一極集中も日本国全体で見れば多大な利益をもたらすことなのです。
というのも、新しいビジネスを始めるにあたって、人口100万人の県で始めるのと、 人口3000万人の首都圏で始めるのではわけがちがうからです。
小さな田舎にコンビニを建てても、お客さんが大量に押し寄せるということはありません。 しかし、首都圏なら大型マンション1棟あれば、それだけで大量のお客さんを呼ぶことが可能なのです。
ビジネスを始めるなら人口の多いところで始めたほうが成功する確率は高く、 そのため新しい技術や新しいサービスがうまれやすくなります。
そして都会で流行したサービスや技術は、地方にも輸出されます。 都会で流行したからにはテレビや新聞、雑誌が黙っていませんし、 地方にやってくると地元住民も興味が湧いて押し寄せてきます。
鳥取や島根にスターバックスやセブンイレブンが進出したときに、 行列ができたことはあまりに有名な話ですね。
中国地方で始まったコンビニ「ポプラ」に行列ができるなんて話は聞いたことがありません。 しかし、東京で流行してからやってきた「セブンイレブン」には行列ができるのです。
一極集中の恩恵はいずれ地方にも回ってきます。 今では「ふるさと納税」の制度もありますし、引退したら田舎に住みたいという人も大勢います。
むしろ一極集中させて経済を回し、全国に波及させるほうが効率的ではないでしょうか。
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著者:村田 泰基(むらた やすき)
合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。
その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。
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