鉄鋼業界はオワコン?将来性とビジネスモデルを解説
鉄鋼業界はオワコンと言われがちですが、実は将来性が高く、就職できれば勝ち組の業界です。 なぜなら、日本勢が順位を落としている「粗鋼生産量」は「薄利多売」の商売であり、そもそも儲からないビジネスだからです。 一方の「高級鋼」という儲かるビジネスで日本勢は高い利益を実現しています。
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鉄鋼業界とは?
鉄鋼業界とは、鉄製の素材(鋼板や型鋼など)の製造・販売を行う業界で、 その用途は建設・機械・自動車・鉄道・船舶など非常に幅広く、社会を支える基幹産業を担っていると言えます。 この業界を代表する企業としては、日本製鉄・JFE(鉄鋼メーカー)、伊藤忠丸紅鉄鋼・阪和興業(鉄鋼専門商社)などが有名です。
この業界の特徴は、「汎用品」「高機能品」の2つのビジネスを持つことです。 「売上高」や「粗鋼生産量」で会社を比較してしまいがちですが、「儲かる高機能品をどれだけ持っているか」が会社の強さです。 これについて詳しくは、次の関連記事で解説しています。
鉄鋼メーカーは、「高炉メーカー」と「電炉メーカー」の2つに分類されます。
高炉メーカーは、輸入した鉄鉱石をコークス(石炭を加工したもの)によって溶かし、鉄を取り出す設備を持つ鉄鋼メーカーのことで、 この分類に属する企業には日本製鉄・JFE・神戸製鋼所があります。「粗鋼生産量」で世界ランキング上位に位置し、中国宝武鋼鉄集団(中国)・アルセロールミタル(ルクセンブルク)などと争っています。
電炉メーカーは、主にスクラップを溶かして鉄を作り直す設備を持つ鉄鋼メーカーのことで、 この分類に属する企業にはプロテリアル・大同特殊鋼などがあります。コークスを利用する高炉メーカーに比べ、 電気によって鉄をリサイクルする電炉メーカーは、CO2排出量が少ないことから近年注目されています。
「粗鋼(汎用品)」を製造する高炉メーカーのほうが企業規模が大きいという特徴がありますが、 後述の通り素材メーカーは「汎用品」より「高機能品」で利益を出す業界です。 よって、企業規模に関わらず企業研究を進めることが重要です。
鉄鋼業界はオワコン?
「鉄鋼業界はオワコン」と言われる理由は、次の3点です。
- 粗鋼生産量ランキングで日本勢が順位を落としている
- 中国での過剰生産によるダンピング
- 高炉メーカーの工場閉鎖
確かにこれだけ見ると「オワコン」かのように見えてしまうのですが、これらは「汎用品」の話です。 「高炉で粗鋼を生産する」のは「薄利多売の商売」であり、1位であろうとあまり利益の出せる分野ではありません。 ゆえに、騒がれているほど大した問題ではないというのが結論です。
将来性が高い理由
将来性 | 高い |
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鉄鋼業界の今後の将来性は高いです。その理由は次の3点です。
1.高級鋼に強いから
理由1 | 高級鋼に強い |
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1つ目の理由が、「高級鋼に強いから」という理由です。
鉄鋼メーカーでは「普通鋼」と「高級鋼」の2つのビジネスを持ちます。
普通鋼とは「単なる鉄(汎用品)」で、「粗鋼生産量」の「粗鋼」のことです。 特別な技術は必要なく、高くは売れません。「薄利多売の商売」になるため、あまり利益を取ることができない製品です。
一方の高級鋼は炭素・ニッケル・クロム・マンガンなどの「混合物」によって特徴を出した製品で、簡単に言い換えれば「高度な技術を要する特注品」です。 高度な技術に加え、特許権によって独占可能なこと、さらに顧客メーカーの不良品率や品質に影響するため他社への乗り換えが難しく、高い利益を取ることができます。
例えば日本製鉄による「トヨタ自動車に対する値上げ交渉」では、トヨタ側が「外国企業に乗り換える」と発言するなど抵抗を試みたのですが、 結局は値上げが実現したというエピソードがあります。トヨタが値上げを受け入れるのはビジネス界にとってかなり衝撃的で、大きなニュースになりました。 鉄鋼メーカーは「他社への乗り換えが不可能」なほど高い競争力を持つことが伺えます。
参照:トヨタがのんだ大幅値上げ 負け犬体質変えた日本製鉄の改革
2.国産鋼材への信頼性が高いから
理由2 | 国産鋼材の信頼性 |
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2つ目の理由に、国産鋼材への信頼性が高いというものがあります。
筆者の私は建設系のメーカーで働いていましたが、公共工事・民間工事ともに国産の鋼材しか取り扱ったことがありません。 中には顧客が「鉄鋼メーカーの工場にまで来て鋼材を確認する」場合もあるほどの徹底ぶりで、 そうでなくとも「どこのメーカーの鋼材を使うのか」を聞いてくる顧客が非常に多かったです。
このような風潮の背景にはやはり「国内鉄鋼メーカーの技術力の高さ」があり、「同じ規格の鋼材」であっても、 「粗悪品をつかまされたくない」という顧客が「国産品を求める」という傾向にありました。
3.環境意識の高まりで電炉が脚光を浴びているから
理由3 | 環境意識の高まり |
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3つ目の理由に、環境意識の高まりで電炉が脚光を浴びているというものがあります。
前述の通り、電炉は「電気」で「リサイクル鉄をつくる」という点で環境負荷が小さく、近年注目を集めています。 自動車や建設業界など鉄鋼メーカーの主要顧客が「環境負荷低減」を重視している現状で、石炭を利用する高炉が相応しくないという風潮です。
これにより電炉メーカーも十分な利益を出せており、各社平均年収が700~800万円ほどと高めの水準になっています。
一方で日本製鉄・JFE・神戸製鋼所の3社は「電炉への切り替え」に伴い「高炉を閉鎖」しています。 これは景気の悪いニュースなどではなく、環境負荷軽減の取り組みの1つです。
将来性の解説は以上となりますが、鉄鋼業界は日本製鉄・JFEスチールに人気が集中して、 残りの企業は高待遇の割に就職難易度の低い穴場になっています。
次の関連記事では「勝ち組ランキング」「就職難易度」「選考」「志望動機」について解説していますので、 志望度が高まったらぜひご覧ください。
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著者:村田 泰基(むらた やすき)
合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。
その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、11年間に渡り学生の就職活動を支援している。
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