社員のモチベーションが低い理由|どうすれば高められるか
社員のモチベーションが低い理由はなんでしょうか。 サラリーマンは概してモチベーションが低く、やる気がない、覇気がない、 仕事を楽しそうにしないと嘆く経営者、管理職は多いです。
社員のモチベーションが低い理由を解明したいと思います。 初めに言っておくと、モチベーションを高めるのは非常に困難です。
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モチベーションとは何か
モチベーションとは動機付けという意味の言葉です。 「社員のモチベーション」とは、一生懸命働く動機付けという意味です。
モチベーションが低いということは、一生懸命働く動機がないということに他なりません。 それゆえモチベーションを高めるのは非常に困難なのです。
モチベーションは勝手に湧いてくるものではなく、社員の気持ち次第で上がるものでもありません。 「モチベーションをあげろ」といってあがるのであれば、誰も苦労しないのです。 モチベーションを高めるには、一生懸命働いたリターンを用意しなくてはなりません。
動機がなければ一生懸命働く理由もありません。 動機も用意せずに「社員のモチベーションが低い」と嘆くのは身勝手な話です。
モチベーションを高めるには、まず報酬を準備しなくてはなりません。 しかしこの「報酬」には様々な意見があります。
モチベーションと給料
「モチベーションに報酬が必要って、給料を払っているじゃないか!」というのは愚問です。 現在の日本では、給料は働いた報酬ではありません。実質的に時間を奪った慰謝料になってしまっています。
毎月の給料や毎年の昇給は、年功序列型の日本ではモチベーションにつながりません。 会社は社員に給料を支払うわけですが、なぜ社員は給料がモチベーションにつながらないのでしょうか。
社員が会社に利益を出したところで、給料は次の昇給まで変わりません。 昇給したとしても数千円~1万円程度です。来年の数千円のために頑張れというのも酷な話です。 一生懸命働く理由としては弱すぎます。
多くの会社には「賃金表」があります。年齢給が1年で2000円あがり、職能給は1号俸1500円で、年間1~5号俸上がるといった会社の制度です。 昇給が明確化されており、これを是とする人は多いです。 しかしこの賃金表がモチベーションを低める原因になってしまう場合があります。
通常、職能給の「何号俸上がるか」は、上限があります。昇給に上限があるのです。 どんなに頑張っても1万円までしか昇給しない、頑張らなくても6000円昇給するといったものです。
一生懸命働いてどんなに莫大な利益を出そうとも、昇給に上限があるのでは、一生懸命働いてもしょうがないと思われてしまいます。 血反吐を吐きながら1万円の昇給をもらうより、ほどほどに働いて8000円の昇給を得たほうが精神的に楽ですし、 失うものを比べるとほどほどに働いたほうがオトクなのです。
ここには、給料が安いというよりも、一生懸命働いたリターンに期待できないという思いが強いです。 終身雇用、年功序列の弊害です。いずれ課長や部長などの役職がつけば年収は増えるわけですが、 それまで低賃金で馬車馬のごとく働くというのは、あまりにも投資期間が長すぎます。
それに頑張って結果を出せば将来必ず報われるというものでもありません。 企業は景気の良いときに大量採用しますから、バブル期や2000年代初期の人数が多いんですね。 彼らがポストを占領し、奪い合いますので下の世代は上の世代が退職するのを待たざるを得ません。
会社に莫大な利益を出した社員も必ずしも役職について大幅な年収増があるというわけではないのです。 頑張っても大した昇給が期待できない上に、後で報酬が支払われるかどうかもわからないのです。 頑張るメリットが非常に薄いのです。
人間はどうしても目先の利益を追ってしまうものです。 何十年も後の報酬よりも、「今どっちがオトクか」のほうが重視されます。
「一生懸命働かなくてもある程度の給料はもらえるし、一生懸命働いてもたいした報酬はない。 ならば楽をして適当に働こう」というのが最も合理的なんですね。
社員のモチベーションが低い理由
社員のモチベーションが低い理由は2つ挙げられます。
理由1:頑張りと報酬が連動していない
社員のモチベーションが低い理由は、頑張ったときに得られる報酬が少ないからです。
昇給には上限があり、どんなに一生懸命働いてもそれ以上、給料が上がることはありません。 ある程度の成果を出して、あとはのほほんと気ままに働いたほうがオトクなのです。 「頑張っても報われない社会」を体現していると思います。
原因はやはり賃金表です。昇給に夢がないと思わせてしまったら、 もうその社員は頑張りません。賃金表という、思わぬところで社員のモチベーションの低下を招いているのです。
逆に一生懸命働かなくてもある程度の給料が保障されているということもモチベーションの低下を招く要因です。 働かなくても給料がもらえるのなら、働かないほうがオトクに決まっています。 このように会社に給料だけもらう社員を「ぶら下がり社員」と呼びます。
一生懸命働かなければクビになる、あるいは給料が下がるという制度であれば、 こういった「ぶら下がり社員」は存在しないでしょう。しかし、終身雇用、年功序列が当たり前になってしまった日本社会では、 いきなりこのような制度に変えるのは困難です。
しかし、終身雇用や年功序列が社員のモチベーションの低下を招いているのは間違いありません。
ボーナスもモチベーション低下の原因です。 おかしな話ですね。ボーナスは、儲かったから得られるものなはずです。 会社に利益が出れば利益が出るほどボーナスが上がるはずです。
「ボーナスがあるんだからモチベーションが高くならないのはおかしい」と思う方もいるかもしれません。 しかしそれは本当にボーナスが利益に応じて支払われていたらの話です。
ボーナスは基本給に倍率をかけて支給されます。基本給の2倍~3倍程度で支給されるのです。 結局のところ、ボーナスは利益に応じて支払われると言いながら実質的には年功序列なのです。 頑張ったところでボーナスが跳ね上がるわけではなく、出した利益は全社員に、年齢に応じて支給されるのです。
自分の頑張りは自分のボーナスにはほとんど反映されません。 それどころか、頑張らない年上の社員に吸収されてしまうのです。 こんなことではモチベーションが高まるどころの話ではないですね。
みんなが利益を出せば、自分が突出して利益を出さなくてもボーナスは支給されます。 これも社員のモチベーションを低下させるのです。
また、支給が当たり前になり、それどころか安定支給をしている会社が多いですから、 「多少サボってもボーナスにほとんど影響しない」という状態を作り出してしまいます。
まさか賃金表どころか給料もボーナスも終身雇用も年功序列も、 社員のモチベーションの低下に一役買っているだなんて驚きですね。
理由2:会社がビジョンを見失っている
モチベーションは「頑張りと報酬」も重要な要素ですが、「お金」ですべてが決まるというわけではありません。 たいして稼げなくても、それが「面白い仕事」であれば、仕事を自分事としてとらえて主体的に働くはずです。
「仕事の面白さ」を見失って、仕事が単なる「生活費を稼ぐ手段」と化している点に課題があります。 これではいくら報酬が高くても、永遠にモチベーションが高まることがありません。
これが、大企業や老舗企業でよく言われる「大企業病」です。 業務の分担がしっかり行われ、細分化された業務を個人が担当します。 個人は「細分化された業務」を最適化するために働きますが、細分化されているがゆえにその終着点が見えなくなってしまうのです。
年功序列型賃金のため、短期的・中期的にはあまり給料が上がらないことは社員もわかっています。 そのため「働く目的」が「生活費」だけだと、たいしたリターンがないことが決まってしまっているようなものですから、 モチベーションが上がらないというわけです。
経営理念やビジョンに立ち返って、 社員全員が「この理想を実現するために頑張っている」と自信が持てるような環境をつくり、 「生活費」以外の「働く目的」をつくることが必要です。
理由3:スタッフ管理職の待遇が悪い
どこの会社でも「ライン管理職」と「スタッフ管理職」に分かれていると思います。 「ライン管理職」の報酬が高い一方で、スタッフ管理職はそもそも高い年収が期待できないという点でモチベーションの低下を招きます。
そもそも「会社に利益を出す」ことと、「リーダーの素質がある」ことは別問題だと思います。 向き不向きはありますし、エース級営業マンが現場に必要なので、ライン管理職になれないということもあると思います。
しかし、日本企業の賃金規則では「ライン管理職」には特別な報酬が用意されている一方で、 スタッフ管理職は「ライン職より何万円安い」という賃金表が用意されているに過ぎません。
このことはスタッフ職のみならず、若手社員にも伝わります。 「ライン職になれない限り、報酬増は期待できない」と思われてしまうとおしまいです。
というのも、働いていれば「あの人が出世しそう」というのはわかってくるものですし、 ライン職の席が少ないことはわかりきっています。 スタッフ職の報酬制度に魅力がない限りはもうあいつに任せようという気になってしまうのです。
以上より、「ライン・スタッフ」の役割ではなく会社に出した利益のような「実績」に応じた報酬が必要だといえます。
社員のモチベーションを高める方法
上記の「モチベーションが低い理由」に対する解決策を解説します。
方法1:賃金制度の見直し
社員のモチベーションを高めるには、 やはり賃金表、給料、ボーナス、終身雇用、年功序列を見直さなくてはなりません。
とはいえ、いきなり終身雇用や年功序列を廃止して、クビにするだとか、 減給するといった不利益を課してモチベーションを高めようとするやり方はうまくいきません。 「ブラック企業」だと思われて就職希望者が寄り付かなくなります。
報酬が増えずに負担だけが増えるのであればやはり、モチベーションにはつながりません。 あるのはただの脅迫観念だけです。どんどん退職していくことが予想されます。
まずはボーナスと基本給を無関係にするのが一つの手でしょう。 その年の人事査定にのみ従ってボーナスを支給するのです。 年齢が上がれば上がるほどボーナスが増えるという制度は合理的ではありません。
ボーナスと基本給を無関係にすれば、毎年頑張らないとボーナスは減る可能性も出てきますし、 逆に若くても頑張れば多額のボーナスを得られる可能性もありますので、 社員のモチベーションを高めるのに有効だと思います。
特にボーナスは給料と違い、ボーナスが下がっても労基署や裁判所に怒られることはありません。 会社が一番触りやすいのはボーナスなのです。
次に、昇給の上限を撤廃することでしょう。 グレーなやり方ですが、別に無限に昇給させる必要はありません。
数千円~1万円といった昇給の範囲を定めず、「ものすごく昇給する可能性もある」と期待を持たせることで、 社員のモチベーションを高めるのです。
このように、年功序列や終身雇用の弊害をなくしていくことが必要です。
方法2:働く目的を全社で共有する
会社には「中期経営計画」というビジョンを示すものがあります。 しかし、この中の「数値目標」が独り歩きして、各部門、部署、個人には「ノルマ」だけが降りてきます。 無機質な数値目標は単なるプレッシャーにしかならず、モチベーションを上げることにつながりません。
数値目標は、「理想像」を実現する一手段に過ぎません。もちろん各部門で数値目標は達成しなければなりませんが、 その先の「理想像」という「夢の共有」がモチベーション向上には重要です。
私の個人的な経験ではありますが、営業マンとして働いていたとき、重いノルマがありました。 そして担当した分野も特殊だったため、人より多くの顧客を開拓し、人より多くの見積もりをこなし、契約件数を稼ぐ必要がありました。 仕事が非常にキツかったのです。
ですが、私には励みがありました。それは喫煙所で会うたびに「ビジョン」の話をしてくれる役員の存在です。 「俺はこの製品をデファクト化したいんだ。デファクト化とはな…」と説教の代わりに夢を語ってくれるのです。
私はそれに共感し、目の前の大変な業務の先に、「夢」を見出すことができ、働き続けることができたのです。
数値ではない「夢」を全社で共有することは、社員の励みになるはずです。
モチベーションを高める仕組みの実例
「仕事単位」で値段を決めて、部署ごと、個人ごとに採算を取らせる京セラの「アメーバ経営」が有名ですが、 アメーバ経営には「会社のメリット」はありますが、「個人のメリット」が乏しいと思われます。
これに対しシリコンウエハー加工機械の「ディスコ」では、 「部署・個人ごとの採算」と「個人のメリット」を連動させた制度を敷いており、 モチベーションを高める仕組みがあるので、紹介します。
「仕事単位」で値段を決め、自営業のように個人で採算をとらせるのはアメーバ経営と同じです。 アメーバ経営ではこの差額が「会社の経費削減」になります。 一方で、ディスコではこの差額が「個人のメリット」になります。
社内通貨である「ウィル」によって仕事単位に値段をつけて、社員はウィルを使って「仕事オークション」を行い、 日々の業務を「購入」します。払ったウィルに対して報酬のほうが多ければ、その差額が自分の物になります。 「良い働き」をすればオークションを介さず直接仕事の依頼をされるようになり、「ウィルがもっと稼げる」ようになります。
「ウィル」では他部署の仕事も受注できるため、部署にこだわらず「得意な分野」で活躍でき、 「適材適所が勝手に行われる」「仕事ができる人ほど稼げる」仕組みになっているわけです。
稼いだウィルの使い道は、社内投資や「フリー」という「何をやってもいい仕事」を受注するのにも使えますが、 なんといってもウィルの一部がボーナスに上乗せ支給されるという短期的なメリットがあります。
「上司の査定」というブラックボックスによる評価ではなく、「自分の仕事」がウィルによって目に見える形で評価されますから、 「頑張れば頑張るほど報酬が増える」ことが明白です。それゆえ社員のモチベーションが高く、 働きがいのある会社ランキングで大企業部門で国内3位をとっています。
また東京エレクトロンでは「年功序列」「能力主義」を廃止して、職責に応じた賃金制度を確立しています。 勤続年数や年齢に関わらず、仕事に応じた給料を支給しているのです。(日経ビジネス記事)
現在の主流である「能力主義」では結局のところ、「入社が早いほうが給料が高い」という点で年功序列的です。 同じ部署で同じ仕事をしているのに、「若いから」というだけの理由で給料が安いのはモチベーションを低下させます。
東京エレクトロンでは「仕事内容(その責任)」に応じて給料をあらかじめ設定することにより、 若手でも抜擢されれば大幅な報酬増が期待でき、逆にサボれば低い等級に減給されますから、 仕事と報酬が連動していると言えます。
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著者:村田 泰基(むらた やすき)
合同会社レセンザ代表社員。1989年生まれ。大阪大学法学部卒。2013卒として就活をし、某上場企業(メーカー事務系総合職)に入社。
その後ビジネスの面白さに目覚め、2019年に法人設立。会社経営者としての経験や建設業経理士2級の知識、自身の失敗経験、300冊以上のビジネス書・日経ビジネスを元に、8年間に渡り学生の就職活動を支援している。
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